Journal

リブランディング事例:SINN PURETEの戦略と成長

SINN PURETEの裏側
リブランディング事例:SINN PURETEの戦略と成長

ブランドとは、単なるロゴやパッケージのことではありません。それは、消費者の心に残り、共感を生み、長く愛される「物語」をつくっていくことです。ブランドは生きています。市場の変化、競争環境の激化、消費者の価値観の多様化——こうした波の中で、ブランドはただ「続ける」だけではなく、進化し続けなければなりません。しかし、ときにその物語が色褪せてしまうこともあります。

「ブランドを継続して進化させたい。でも、どこから手をつければいい?」 「移り変わる市場の中で、ブランドの魅力をもっと深めるには?」

このような課題に直面する企業は多く、その解決策として鍵となるのが “リブランディング”。ただ見た目を変えるのではなく、ブランドの本質を見つめ直し、新しい時代に響く姿へと生まれ変わること。本記事では、ビューティーブランド「SINN PURETE」(シンピュルテ)のリブランディングをもとに、ブランドがどのように進化し、さらに輝くのか。その道筋を紐解いていきます。

目次

1. リブランディングとは?

リブランディングとは、単なるイメージ刷新ではなく、ブランドの価値を再定義し、新たな市場でのポジショニングを確立する戦略です。それは、過去の延長線上にとどまるのではなく、ブランドが持つ本質を深く見つめ直し、新たな「物語」を紡ぎ直すこと。

リブランディングの本質とは何か?

市場環境の変化に応じてリブランディングが求められる理由はさまざまです。

  • 競争環境の激化による差別化の必要性
  • 新たなターゲット層へのリーチ
  • 既存ブランドの価値が時代とズレ始めたとき
  • 事業戦略の転換やグローバル展開

こうした課題に対し、リブランディングでは以下のような要素が見直されます。

  1. ブランドの理念・コンセプトの再定義:「私たちは何者なのか? これからどんな未来を描くのか?」——ブランドの存在意義を問い直し、軸となる価値観を言語化します。
  2. ターゲットオーディエンスの再設定:市場が変われば、ブランドのファンも変わります。新しいターゲットを明確にし、彼らに刺さるブランド体験を設計することが不可欠です。
  3. ビジュアルアイデンティティの進化:(ロゴ・パッケージ・デザイン) ブランドの顔となるデザインも、時代の空気感に合わせて進化させることで、新しいブランドの世界観を直感的に伝えることができます。
  4. コミュニケーション戦略の再構築:発信するメッセージは、従来の延長ではなく、ターゲットのインサイトに深く根ざしたものへ。SNS、広告、コンテンツ戦略など、すべてのタッチポイントで一貫性のあるストーリーを届けます。
  5. 製品ラインナップの再設計・強化:ブランドの理念と一致する製品こそが、最も強いメッセージになります。市場ニーズを見極め、ブランドの世界観を体現する商品ラインナップを見直します。

2.SINN PURETEの進化 - ナチュラルコスメから「心を整えるスキンケア」へ

Before:成長するナチュラルコスメ市場の中で、際立つ個性を求めて

SINN PURETEは、もともとジョンマスターオーガニック傘下のオーガニックブランドとして誕生しました。ナチュラル&オーガニックコスメ市場が急成長する中で、多くのブランドが次々と参入。競争が激化する中、ブランドの個性をより明確にし、確固たるポジションを築く必要性が高まっていました。

特に、消費者の意識が成熟し、「どんな成分が使われているのか?」「環境に配慮されているか?」「ブランドのストーリーに共感できるか?」 など、単なるナチュラルコスメではなく、ブランドとしての哲学や価値観が問われる時代に。

そこでSINN PURETEは、単に肌に優しいだけではなく、「心を整えるスキンケア」 という新たな視点を取り入れ、ブランドの再構築を決断しました。

After:「MINDFUL BEAUTY」- スキンケアの時間を、心まで満たす時間へ

リブランディングの核となったのは、「MINDFUL BEAUTY」というコンセプト。 単なるスキンケアではなく、肌をいたわる時間を"メディテーション"として捉え、心のケアへと昇華するという新たな発想を提案しました。

ブランドの進化ポイント 

  • ✔ スキンケアを「心を整える時間」へと再定義 
  • ✔ 香り×スキンケア×マインドフルネスを融合し、五感で癒される体験を提供 
  • ✔ ターゲットを「トレンド志向の20代後半」「エシカル消費に敏感な30代・40代」に再設定 
  • ✔ ビジュアルアイデンティティを刷新し、より洗練されたブランドイメージへ

また、ストレスと肌の関係に着目し、慶應義塾大学の満倉教授と共同で「脳がリラックスする香り」の研究を実施。 忙しい現代人にとって、朝と夜のスキンケアが「心を解放するひととき」となるよう、香りの力を活かしたスキンケアステップを開発しました。

「肌は心の状態を映す鏡」 ストレスが肌トラブルを引き起こすことは科学的にも証明されています。だからこそ、肌だけでなく心にも寄り添うスキンケアを。 どんなに忙しくても、一日の始まりと終わりに「自分を大切にする時間」を持ってほしい。 そんな想いから、SINN PURETEは新たなブランドへと生まれ変わりました。

3. リブランディングの具体的な戦略

心と肌の調和が生み出す、美しさという余白

SINN PURETEは、ただのスキンケアではなく、「肌と心を整えるスキンケアを提案するブランドへと進化しました。美しさとは、単なる肌の状態ではなく、心の余裕と深く結びついている。だからこそ、肌をケアすることは、自分自身を慈しむ時間であってほしい。

その想いから生まれたのが、「ハイブリッドナチュラル処方」。自然由来の優しさと、科学の力を融合させ、効果と心地よさを両立したスキンケアへと進化しました。

製品開発の軸となった3つの要素

  • 香りのコンセプト — それぞれの香りが、心の状態を優しく整える
  • 使用成分 — 肌に寄り添い、確かな実感をもたらす厳選素材
  • 機能・効能 — スキンケアを「儀式」に変える、特別なテクスチャーと処方

「どんな成分を使っているのか?」「環境に配慮されているのか?」「ブランドの哲学に共感できるか?」
そんな現代の女性たちが求める価値に真正面から向き合い、「肌と心を整えるスキンケア」という答えを導き出しましたのです。

コンセプトの刷新

「MINDFUL BEAUTY」 というブランドコンセプトを設定。
スキンケアを「肌のケア」だけでなく、「心を整える時間」と位置付け、消費者に新しい価値観を提案。

MINDFUL BEAUTYとは、毎日のスキンケアにおいて身体と心の繋がりを意識することで マインドフルネスの状態を取り入れ、維持するという意味です。 【引用】:ブランドストーリー | SINN PURETE(シン ピュルテ)

心と肌の調和を大切にしながら、美しさを追求するライフスタイル をベースとしたコスメ商品を展開しました。
ハイブリッドナチュラル処方( 自然由来成分を基本としながら、製品の効果を最大化する科学的アプローチ)を採用し、各商品の

  • 香りのコンセプト・構成
  • 使用成分
  • 機能・効能

を作成しました。

マインドフル フレグランス ノンアルコール の3種の香り
マインドフル フレグランス ノンアルコール の3種の香り

ターゲットオーディエンスの再定義 — 心の変化に寄り添うスキンケア

美しさへの価値観は、年齢とともに変わるもの。だからこそ、SINN PURETEは、ライフステージごとの感性に寄り添うブランドへの生まれ変わりの時。そこで、新たにターゲット層を2種類、再設定しました。

  • 20代後半の流行に敏感な女性
  • 30代前半~40代の環境問題に敏感な女性

20代後半 — 流行に敏感で、“自分らしさ”を模索する世代

この層は、最新のトレンドやSNSでの流行を重視しながらも、自分らしさや質の良さにも関心を持ち始める世代です。
学生の頃とは違い、経済的に余裕が出てきているため、少し高価格帯でも納得感のある商品を選ぶ傾向があります。

  • ✔ 最新のトレンドやSNSをチェックしながらも、“自分にフィットするもの”を求め始める
  • ✔ 経済的な余裕が出てきたことで、「少し高くても納得できるもの」を選ぶように
  • ✔ ただの機能性ではなく、「使う時間そのものが香りの力で特別になるスキンケア」に惹かれる

この世代にとって、スキンケアは「なりたい自分に近づくための時間」。
だからこそ、香りやテクスチャーなど、五感に響く体験を提供することが大切だと考えていました。

30代前半〜40代 — “本物”を知り、選び抜く世代

この世代にとって、スキンケアは「自分をいたわるための時間」。一日の終わりに、心から安らげるスキンケア体験を提供することで、ブランドの価値がより深く響くと考えました。

  • ✔ 仕事もプライベートも落ち着き、“自分が本当に信頼できるもの”を選ぶ傾向に
  • ✔ 価格だけではなく、「品質」「見た目の美しさ」「ブランド哲学」に共感することを重視
  • ✔ シンプルだけれど、心から満たされる“特別な日常”を求める

SINN PURETEのターゲット層

以上を踏まえると、SINN PURETEのターゲット層は、以下の価値観や購買行動が考えられます。

SINN PURETEのターゲット層
20代後半 30代前半〜40代
興味関心 トレンド・SNS映え・話題性 持続可能性・エシカル消費・品質重視
購買動機 「おしゃれ」「流行ってるから」「可愛い」 「環境に優しい」「成分が良い」「ブランドの理念に共感」
価格意識 コスパを重視、手軽に試せる価格帯 多少高くても納得できる価格帯
ブランドへの期待 自分を映えさせる・トレンドを押さえている 社会貢献・ブランドのストーリー・理念の一貫性

コミュニケーション戦略の強化 ー 美しさに、魂を宿す

"美しいものには、神が宿る。"

SINN PURETEは、スキンケアブランドでありながら、「美しさとは何か?」 を常に問い続けてきました。ただシンプルでミニマルなだけではなく、個性を尊重し、装飾や感性の豊かさを肯定する。だからこそ、ブランドのビジュアルも大胆にアレンジを加え、感情を揺さぶる存在へと進化させました。

1. 魅せるSINN PURETEのデザイン — 視覚が生み出す、心との対話

既存顧客との関係を強化し、同時に新たなターゲット層を獲得することを念頭に、新しいロゴ、パッケージング、ウェブサイトデザインを導入し、清潔感と現代性を強調するビジュアルを作成しました。

「mindful beauty」のロゴ
「mindful beauty」のロゴ

2:SINN PURETEのブランド哲学を伝える — 共鳴するコラボレーション

ブランドアンバサダーへの著名人を活用や、インフルエンサーやブランドとのコラボ商品販売を行い、その広告をSNS上で積極的に行い露出を増やしました。その結果、ブランドの新しいメッセージを拡散させることに成功しています。

RIO UCHIDA × SINN PURETE

SINN PURETEと女優・モデルの内田理央さんがコラボレーション。
彼女の持つ「美しさ」と「心の豊かさ」を大切にするライフスタイルは、ブランドコンセプト「MINDFUL BEAUTY®」 そのもの。香りを通じて、心と脳を整え、新しいスキンケアの時間を生み出すプロジェクトを展開しています。

「美しさとは、肌だけではなく心にも宿る。」その哲学を、香りという感覚で表現した特別なコレクションです。

AMERI × SINN PURETE

「ファッションにルールはない」というAMERIの哲学と、SINN PURETEの持つ自由で研ぎ澄まされた美学が融合。今年10周年を迎えたAMERIとのコラボレーションは、単なるスキンケアの枠を超え、ジャンルを超えたエッジの効いたアイテムを生み出しました。

3:最新テクノロジーを駆使した広告戦略——"現実を超えた体験" を生む

近年、各ブランドで活用されているVFXや3DCGなどの最先端技術を使用したビジュアル作成にも取り組んでいます。
見た目にもインパクトある動画の作成が可能となり、SNSだけでなく新宿の3D広告を行ったうことができました。

anicecompany - 3DOOH R&D × SINN PURETE

SINN PURETEの非公式キャラクター『ピュルテくん』を用いた3DCG作品を制作し、新宿クロスビジョンにて放映。キャラクターの可愛らしさを活かしながら、ブランドに親しみやすさをプラスし、新しい形のブランドストーリーテリングを実現させました。

最新のテクノロジーを活用することで、ブランドの世界観をさらに拡張し、「記憶に残るスキンケアブランド」へと進化させています。

4:シリーズ展開

既存のシリーズを大切にしながら、「肌と心を整えるスキンケア」を土台にシリーズ展開をしてきました。

Skin Perfume

肌に馴染み、時間とともに香りが変化するスキンパフューム。まるで自分の体温と調和するように、ナチュラルでありながら個性的な香りを演出。
Skin Perfume シリーズはこちら

Signature Perfumes

2023年に新たな戦略の一環として導入された 「Signature Perfumes」 シリーズ。
このシリーズは、単なるフレグランスではなく、ブランドコンセプト「MINDFUL BEAUTY」を体現する新たな挑戦 でした。
Signature Perfumes シリーズはこちら

femmetech Perfume

「フェムテック × 香り」という新しい領域に挑戦したシリーズ。心身のバランスを整え、香りによるウェルビーイングを提案する革新的なフレグランス。
femmetech Perfume シリーズの詳細はこちら

この3つのラインナップは、「香りのちからで、心まで整える」というSINN PURETEの哲学を体現したコレクション。単なるフレグランスではなく、肌・心・感情に寄り添うプロダクトへと進化しています。

4. リブランディングのポイント

ブランドの核となる「コンセプト」の明確化

リブランディングの最大の成功要因は、「MINDFUL BEAUTY」という新しいブランドコンセプトを打ち出したこと です。
単なるナチュラルスキンケアではなく、「心まで満たすスキンケア」というストーリーを構築 したことで、消費者の共感を得ることに成功しました。

また、このコンセプトは製品ラインナップやマーケティング戦略と一貫しており、統一感のあるブランディングが実現できました。

ブランドの独自性

ナチュラルコスメ市場は、競争が激しい レッドオーシャン。
リブランディング前のSINN PURETEも、「ナチュラルで肌に優しい」という点では他のブランドと大きな違いがなかったため、個性を強く打ち出す必要がありました。

  • 競争の激しい市場で埋もれないために、「スキンケア×香り」「ナチュラル×サイエンス」 という独自のポジショニングを確立
  • 「ただのスキンケアではなく、マインドフルネスを取り入れたスキンケア」 という新しい価値を提案
  • シンプルで洗練されたデザインに刷新し、トレンドや最先端技術を使用。ブランドの視覚的な差別化も強化

ブランドの 美しさとしての"感情" を定義

SINN PURETEのブランド戦略は、単なるマーケティングだとは考えていません。それは、「美しさとは何か?」という根源的な問いに対する、一つの答えを探しだすことです。

  • ✔ 美しいデザインが、人の心を揺さぶること。
  • ✔ 香りが、心の状態を整える力を持つこと。
  • ✔ 進化し続けることで、ブランドが生き続けること。

そして、手に取るすべての人の 「心に、魂に、美しさを宿す」 ブランドであり続けるよう、これからもSINN PURETEは進化し続けます。

SINN PURETE──「心まで満たす」ブランドへ

ただのスキンケアではない。
ただのナチュラルコスメでもない。

「美しさとは、心の在り方で決まる」──そんな想いを込めて、SINN PURETEはリブランディングを決意しました。

ナチュラルコスメ市場が成熟し、あらゆるブランドが「肌に優しい」「オーガニック」を掲げるなかで、SINN PURETEが目指したのは 「心まで満たすスキンケア」 という新しい価値の創造。それは、単なる商品開発ではなく、「美しさとは何か?」という哲学を深く掘り下げることから始まりました。

まとめ:SINN PURETEリブランディングのまとめ

「ナチュラルコスメブランド」から「ライフスタイルブランド」へ

SINN PURETE のリブランディングは、単なるデザイン変更やプロダクト刷新にとどまらず、
ブランドの哲学から、マーケティング戦略、消費者との関係構築に至るまで包括的に設計されたプロジェクトでした。

  • ✔ 「MINDFUL BEAUTY」というコンセプトの確立
  • ✔ 「スキンケア × 香り」「ナチュラル × サイエンス」という独自のポジショニング
  • ✔ 最先端技術とコラボレーションを活用したマーケティング戦略
  • ✔ 未来を見据えた「香りのスキンケア」という新しい価値の創造

そして、SINN PURETEは今、「ナチュラルコスメブランド」の枠を超え、「心まで満たすライフスタイルブランド」へと進化しています。

どんなに忙しくても、どんなに日常が慌ただしくても、一日の始まりと終わりに「心を整える時間」があること。

それが、SINN PURETEが届けたい、新しい「美しさ」の形です。

美しさは、肌だけでなく、心にも宿る。
あなたの美しさを、あなたらしく輝かせるために──。

CONTACTお問合せはこちら